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秋月さやかの月と星の占いメッセージ

「赤い糸伝説」の真実とは・・・

 ある時、編集者からこう聞かれた。「赤い糸は2人の左手の人差し指どうしを結んでいるですよね?」う〜ん、違うと思ったけど。「あ、じゃあ、小指?」う〜ん、それも違うと思うけど・・・。「困ったなあ、2人の運命を結ぶ赤い糸の伝説、という記事を依頼しようと思ったんですけど?」はい?お仕事ですか? あ、ではそのタイトルで確かにお受けいたしました。毎度あり〜、と、さっさと仕事を請けてしまった20年以上前の話。とにかく稼がなくてはならない身。反論などしようものなら、即、仕事がなくなるんですよ。とはいうものの、原典を確かめなくては・・・。そして判明したこと。やっぱり!
 
 この話の元になっているのは中国の古典「続玄怪録」の中に収められた「定婚店」という話。だいたい9世紀頃のお話ですね。ただし、そこでは、2人を結んでいるのは、糸ではなく、縄。そう、赤い縄の伝説! さらには、赤い縄で結ばれるのは、足。それも足首。左手の薬指というイメージはきっと結婚指輪が薬指、からきているんだろう。あるいは小指どうし、って思っている人も多いでしょう。それは指きりげんまん、のイメージかな。でも・・・。
 いちおう編集者には、その真実を告げた。編集者、顔面蒼白。「ええっ!手の薬指を赤い糸で結ぶ伝説だと思っていたんですけどっ!」と驚かれ、「なんとかしてくださいっ!」と。いや・・・なんとかできないわ。私の力では。赤い縄が2人の足首を結ぶ。もしかしたらこれが本当の二人三脚なのか・・・。しかしさすがに、二人三脚のイラストでは問題あり、と思った編集者は、足の小指と小指を結ぶイラストに。私も反論はしませんでしたよ。仕事を失うわけにはいかなかったので。さて、改めて、赤い糸の真実です。といっても、このお話は、有名なので知っている人も多いでしょうけれどね。
 
 固という男が会った不思議な老人は、冥界の役人で、この世の人間たちの縁を決める仕事をしていると告げる。袋の中から、取り出したのは赤い縄。将来、夫婦になる男女の足をその赤い縄で結ぶのだ、と。そこで固は聞く。「では、私も、すでに誰かと縁が結ばれているのでしょうか?」「そうだ。お前の相手はまだ3歳だ。」そして市場に固を連れて行き、野菜売りのこぎたない陳婆さんが抱いている子供を指差す。
 固は自分の運命を呪う。なんであんな貧しい家の娘と…。固は、あの娘を殺してしまえば、この話はなかったことになるのではないか、と考え、下男に金を渡して殺害を命じる。さあ、邪魔者は消えた、これで他の相手と新たに縁が結ばれたろう、と考える固。固は出世し、お見合い話もたくさんやってくるが、なぜかまとまらない。結構いい年になっても、固は一人身。固が、もう結婚を諦めかけた頃、上司からお見合い話がやってくる。なぜか話はとんとん拍子に進み、ついに華燭の典へ。仲むつまじく何ヶ月間かが過ぎるが、しかし、そのうちに固は、おかしなことに気がつく。妻が、造花の髪飾りを絶対に外さない。いぶかる固に、妻は答える。「私、ここに傷があるので、髪飾りで隠しているのです。」よくよく聞いてみると、子供の頃に市場で刺し殺されそうになったことがある、と。「ええっ、ではお前はあの野菜売りの陳婆さんの娘なのか?」「いえ、乳母でございます。私は知事の娘として生まれましたが、赤ん坊の頃に父は亡くなり、乳母だった陳婆さんが私を育ててくれたのです。その後、今の家の養女となりました。」
 
 この話を読んで、みなさんはどう感じるでしょうか? 固が、かつての自分の行いを恥じたことはいうまでもないでしょう。固の妻もびっくりしたはずです。この後、2人は幸せに暮らしたのでしょうか?それとも・・・?
 
 さて、占星術では「赤い糸」を占うことはできるんでしょうか? 赤い糸の解釈はさまざまですが、私の場合には、恋愛の縁は火星と金星の組み合わせを基本に、結婚は太陽と月との組み合わせを基本にして占います。占術家によっては、他の手法を用いることもあるでしょう。いってみれば、占術ロジックから赤い糸を数値化して判定するわけです。「ほお、数値化ですか」などと訝しげに質問されてしまうことがあるのですが・・・。
 では、占星術で相性の良い異性を目の前に連れてきたら、恋愛が始まるのか?という疑問も当然あるでしょう。このあたりは、なかなか難しいところなのですが、「出会えた」という大前提があっての相性判定なのです。出会ってもいない相手との相性を論じてもどうしようもないのです。そういう意味では、「お前の相手はまだ3歳だ。」というあたりが、どう考えても不自然です。まあ、お話はお話です。伝説などではない、あなたの赤い糸をしっかりとみつけていただきたいと思います。
 そして、縁がある、というのは、必ずしも幸せなことばかりとは限らないのです。でも、それもまた縁なのです。2人3脚というのは、そういうもの。はっきりいって、相手がいないほうが走りやすいでしょう。一緒になって転んでしまうこともあるはずです。まさか、相手を抱えて走っていくわけにはいかないわけで・・・。赤い糸で結ばれるというのは、結構覚悟がいるものなのかも知れませんよ。

占術研究家 秋月さやか


※ この記事は、筆者秋月さやか公式サイト内の記事を元に作成しています。
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